成人は子どもに比べて、口腔トラブルを起こしにくい印象をお持ちではありませんか?それはあながち間違っていませんが、高齢になるとむし歯リスクが徐々に高まります。
それは一体なぜなのか、有効な対策とともに解説します。
年配の方ほど罹患しやすいのはなぜ?
考えられる主な理由は、次の通りです。
- 歯周病にかかりやすいため
歯と歯茎の境界部分である、歯の根にできるむし歯を「根面う蝕」といいます。年配の方に多く見られるのが特徴です。
このむし歯では、歯周病や加齢によって歯茎が後退し、剥き出しになった根元部分が蝕まれます。根っこの部分はエナメル質で覆われていないため、一度蝕まれると進行しやすいのです。
今まで健康であった歯はもちろん、過去に被せ物をした歯の根にできることもあるので注意してください。
鏡を見たときに
「最近なんとなく歯茎が下がってきたかも…」
と感じた方は、リスクが高まっているかもしれません。
歯茎が後退すると知覚過敏にもなりえるので、定期的な歯科検診で口腔状態をチェックしてもらいましょう。
- 唾液分泌量が減少するため
唾液分泌量が減少すると、ドライマウスになる可能性が高まります。年齢を重ねると唾液量が減るのは、口腔周りの筋肉を、加齢に伴い徐々に動かさなくなるためです。また、持病やストレスの蓄積が関係していることもあります。
唾液が減ると、口腔内に残った食べかすを洗い流せなくなります。また初期むし歯を再石灰化する働きが間に合わなくなり、それがむし歯につながります。
寝る前などのリラックスした状態で、唾液腺を軽くマッサージするのがおすすめです。耳下や顎下をやさしく揉めば、唾液の分泌が促されるでしょう。
- 補綴物の下で二次カリエスが起こるため
過去に治療した歯が、再度むし歯になることを「二次カリエス(二次むし歯)」といいます。
年齢に関係なく起こりますが、時間の経過によって再発リスクは高まるため要注意です。
二次カリエスになると、過去の補綴物を外したあとに歯を大きく削り取ります。再度補綴をすれば治療は終わりますが、場合によっては抜髄が必要になることもあるでしょう。
なお、過去に抜髄をした歯に関しては、二次カリエスの際に痛みを感じません。かなり進行してから気付くことになるため、抜歯を余儀なくされるケースもあります。
健康で大切な歯を少しでも長く残せるよう、予防を徹底してくださいね。
- 加齢に伴いエナメル質が擦り減っていくため
年齢を重ねるにつれて、歯の表面を覆うエナメル質が徐々に擦り減ります。すると酸によるう蝕が進行しやすくなり、あっという間にむし歯になってしまいます。年月の経過だけでなく、悪習癖(歯ぎしりや食いしばりなど)で擦り減ることもあるので注意が必要です。
二次カリエスを防ぐには?
むし歯は、いわば細菌による感染症です。ミュータンス菌を始めとした細菌が、口腔内で繁殖して歯を蝕み、徐々に溶かされていきます。
仮に患部を削って補綴しても、口腔内にたくさんのむし歯菌が残っていると別の場所へ再発します。
口腔トラブルを予防するには、口の中の細菌数を減らすほかないのです。
そのために欠かせないのが、日々の口腔ケアです。丁寧なブラッシングで、歯に付着したプラークをできる限り取り除きましょう。
特に、過去の補綴物と天然歯との境界部分は注意深く磨かなければなりません。歯と歯茎の間や、歯間に挟まったプラークなども忘れず除去しましょう。必要に応じて、歯間ブラシやデンタルフロスを使用してくださいね。歯質強化のために、フッ素が配合された歯磨き粉や洗口剤を活用するのもおすすめです。
また3ヶ月~半年に1回程度は、歯科医院で定期検診を受けるのがおすすめです。口腔トラブルの有無をチェックし、専用の機器を用いてプラークや歯石を取り除いてもらえますよ。歯石は普段のブラッシングでは落とせない硬さなので、口の中をきれいにするためにぜひ定期検診を受けてほしいと思います。
まとめ
年配の方がむし歯になりやすい理由の一つとして、加齢伴う組織の衰えが挙げられます。
歯茎が後退して根元部分が剥き出しになると、口腔トラブルに加えて知覚過敏も起こしやすくなります。
さらに、ものを噛めなくなると、脳への刺激が減って認知症リスクが上昇します。そう考えると、悪循環でしかありませんよね。
健康な口腔状態をキープするために、定期的に歯科検診を受けるようにしましょう。まずは、かかりつけ医に相談してみてくださいね。
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